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地域材利用建築物の建設促進に向けたセミナー(第3回)総括シンポジウム

平成23年1月17日、田村市船引町の学校法人若草学園わかくさ幼稚園で地域材利用建築物の建設促進に向けたセミナーを開催しました。
■総括シンポジウム
ふくしまの家地域活性化推進協議会(事務局=県耐震化・リフォーム等推進協議会)は17日、田村市船引町の学校法人若草学園わかくさ幼稚園で地域材利用建築物の建設促進に向けたセミナーを開き行政、関係団体、設計、施工者、製材関係者など約50人が参加した。
 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の昨年10月1日施行に合わせ同法理解促進と、県内での産業活性化につなげようとこれまで2回研修を行っており、今回が総括となる。
 初めに同協議会の宗形芳明県木材協同組合連合会専務理事が「一昔前まで公共建築物は鉄、コンクリートが近代化の象徴だったが、学校など低層建築物に木材利用が促進されることとなり、われわれ木材に携わるものには朗報。安定供給に向けこれに取り組んでいきたい」とあいさつした。
 まず菅野典雄飯舘村長が「学校建築への地域材利用に関する取り組み」について講演。菅野村長は、木材をふんだんに使い15年度に竣功した飯樋小学校を紹介した。設計はプロポーザルにより選定した清水公夫研究所。子供に暖かさ、楽しい居場所など5つの目標に沿い設計された「学校らしくない学校」で、これまでが「管理のための学校」だったが、これを「子供の五感を育てるためのもの」とした。
 また18年度にスタートした県森林環境交付金事業で、村内に県産間伐材利用の椅子、机、内装材、木製遊具を設置した。
 こうした先進的な取り組みから今後の行政側の課題として?林業事業の体制づくりや国民のコンセンサスづくり?多目的活用のための工夫?地域材を活用するための工夫?子供の時からの木への接触?補助事業の充実?景観への活用―を挙げた。
 パネルディスカッションでは三春をはじめ県内十数カ所の学校建築に携わった長澤悟東洋大学建築学科教授をコーディネーターに、会場となった木造平屋総延べ4100平方▲メに及ぶわかくさ幼稚園設計者、清水公夫・清水公夫研究所代表取締役、瀬谷善寿県建築大工業協会相談役、早川英二田村森林組合代表理事組合長、八島信夫県建築安全機構理事長が意見を交換。
 八島理事長は公共事業費の限界までの削減、民間設備投資の低迷、一般競争入札によるダンピングの横行、建築産業も新設住宅着工の冷え込み、パワービルダーの地方侵攻など取り巻く厳しい状況下にあって、林野庁が林業再生と木材の安定供給を目指し発表した「森林林業再生プラン」と、実質的な効力を担保するため最大の需要先となる公共建築に狙いをつけた木材利用促進法が「建築業界にとっては希望の光」と紹介。
 しかし国産材、県産材活用にはまだ?コスト縮減?品質確保?供給体制―の課題があり、その解決に「森林関係、木材加工、木材販売、設計、施工が一つのテーブルに着くことがカギ」とし、住まいづくりで培ったこうしたグループの取り組みを大規模建築物、公共建築物に生かすことを提案した。
 また国土交通省が年度内に策定する木造設計基準、県が近く原案を示す木材利用促進法に基づく県基本方針と年度内に策定する推進計画が普及の原動力になるとした。
 建設業と林業とのコラボである「林建協働」の考え方にも触れ「本県ではまだ、その精神が具体的に検討されていないがこれに光を当てるべき」と提案した。
 清水氏は、わかくさ保育園を設計した当時について「最先端の建築を手がけたい年代だったが、その一方で地球という素材を建築に使うことが共生ではないかという思いがあった」と述べ、「設計者には哲学が必要で木を使えばいいというわけではない。建築物が5年後、10年後どういった形となるか、材料に限らず影響、効果を考えなくてはならない」と主張した。
 瀬谷氏は、戦後まもなくに鮫川、母畑など5棟の木造の学校建築に携わっていた時代を振り返り、その仕事の様子を紹介した上で、「現在で(木造の学校を)作るとなれば、20人の棟梁が必要。その人数を集めるといった問題もあるが、仕事が変わり道具自体も変わってしまっている状況」と話した。
 早川氏は、戦後すぐに植林した木が相当育っており「少子高齢化が進んでいる」と山の状況を表現。組合は平成9年に山主が植えた木を販売しようと製材工場を立ち上げ、今では60人ほどの雇用の場となっているという。山元では再生プランを基に、世界の林業国に対抗するには集約化と大型機械化による省力化が必要としたほか、現在の高気密高性能住宅に応えるため乾燥機を導入。木材すべてに含水量や強度を提示して販売しているという。「同じ山から切り出しても、その水分量や強度は異なる。これをきちんとしないと需要拡大にはつながらない」と話した。
 長澤氏は「住宅以外に木を使わない建築の時代が長くあり、これにより川上と川下が切れてしまい技術者もいなくなった。この仕組みを作り直すことが大きな仕事」として東洋大学に設置した木と建築で創造する共生社会研究センター(WASS)の活動内容を紹介した。
 この「間に合わせ」ではない仕組みづくりのため、住宅規格に合わせた製材で学校を建築し、使わなかった場合も住宅材として使用しコストを大幅にカットした能代市や、トレーサビリティの考えを取り入れ、加工工場を地域にこだわらない中津などの実例を紹介。木があるが建設の需要がない地域(=山)と需要はあるが木がない(=町)との関係構築に、本県が進む道があるのではと提案した。
 会場となったわかくさ幼稚園の見学も行われた。

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